食物アレルギーはありますか?
皆さんご存知のとおり、食物アレルギーとは特定の食べ物に含まれるアレルギーの原因物質(アレルゲン)に免疫機能が過剰に反応してしまうことで、蕁麻疹や湿疹などのかゆみを伴う症状や咳や息苦しさ、口の中や喉のイガイガ、炎症など様々な症状を引き起こすものです。
食物アレルギーにはいくつかタイプがあり、そのうちのひとつに、特定の食べ物を食べた後に、運動がきっかけで症状が現れる「食物依存性運動誘発アレルギー」というアレルギーがあります。
比較的稀な食物アレルギーのタイプですが、運動する本人はもちろん、指導者や保護者の皆さんもぜひ、知識として持っておいてください。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは
食物アレルギーにはいくつかタイプがあり、そのうちの一つが食物依存性運動誘発アレルギーです。
皆さんがよく知っていてイメージしやすい食物アレルギーである「即時型の食物アレルギー」と「食物依存性運動誘発アレルギー」の違いを簡単にまとめると、次のようになります。
◆即時型の食物アレルギー
ある特定の食品を食べた直後〜30分程度の間に
蕁麻疹や湿疹などの皮膚症状、口腔内の痒みや喉のイガイガなどの粘膜の症状、嘔吐や下痢などの消化器症状、咳や呼吸苦などの呼吸器の症状などが起きる
◆食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食品を食べたあと、数時間以内に運動負荷が加わることによって症状が現れる。
(特定の食品を食べただけでは症状はありません。もちろん、運動のみで症状が現れることもありません。)
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの特徴
発症ピーク年齢
学童期から大人まで発症することがありますが、初めて発症するピークは10〜20歳代です。発症頻度は中学生6,000人に1人と報告されています。
原因となる食べ物
小麦とエビ・カニなどの甲殻類が多いと報告されていますが、果物や野菜の報告も増えてきています。
また、特定の食品の摂取と運動によって必ず症状が現れるというわけでもなく、下記の表のような複数の要因が関与しています。
■発症に影響する要因
発症時の運動
球技やランニングなどの強度の高い運動をしている時の発症が多い一方で、散歩や入浴中などに発症している例もあります。
また、食後2時間以内で運動をした場合の発症が多いことも報告されています。
対策と注意
食後の運動でアレルギー症状が現れた場合の対応は次の通りです。
【1】
食事の時間、食べたもの、運動の内容などを記録して、病院を受診しましょう。
問診や検査を受けて原因の食品を見つけます。原因が特定されるまでは、食後すぐに運動をすることは避けておきましょう。
【2】
原因となった食品が特定でき、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの診断が出たら、運動前に原因となる食品を食べないように管理していきます。
このアレルギーの特徴は、特定の食べ物と運動をいう条件が揃った時のみ発症するということです。
過剰な食事制限や運動制限は選手のストレスになり、Q O Lの低下にもつながります。
また、チーム内に食物依存性運動誘発アナフィラキシーを持つ選手が所属していることがわかった場合には、合宿での食事やチームみんなで摂る補食がある場合に配慮が必要になります。
まとめ
いかがでしたか?
運動をしているから健康とは限りません。アレルギーや持病とうまく付き合いながら競技力向上を目指す選手も大勢います。
選手自身は自分のカラダやコンディションと向き合うこと、サポートをする家族や指導者は、知識を持っているだけでも気づけることは多くあります。
万が一のためにも、入部や入団の際、問診票の項目に加えてみてはいかがでしょうか?
参考:食物アレルギー診療ガイドライン2016(日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会)