アスリートにとって、パフォーマンス低下の原因となるストレス要因はケアしたいポイントの1つですよね。
特に、運動量の多いアスリートの体内においては「活性酸素」と呼ばれるストレス要因が多く生産され、筋肉の状態の低下や疲労回復の妨げの原因となり、身体にとってストレスになってしまいます。
活性酸素についての詳しいお話はこちら
>>>活性酸素とは?
そこで、今回は活性酸素対策に有効な「カロテノイド」の働きについて細胞レベルでご紹介いたします!
特に夏の時期は、紫外線により活性酸素が増加し、ストレスが増えやすい時期です。
パフォーマンスを低下させないよう意識的に取り組む方法の1つとしてチェックしてみてくださいね。
私たちの身体に必要とされる緑黄色野菜
幼い頃に、親や学校の先生から「色の濃い野菜(=緑黄色野菜)を食べなさい」と教わった人も多いのではないでしょうか。
この自然由来の濃い色素こそが、強い抗酸化力を有するのです。
その代表格である「カロテノイド」は赤色の食べ物に含まれています。
例えば
人参のβ-カロテン(ビタミンA)、トマトのリコピン、甲殻類のアスタキサンチンなどは、カロテノイドが豊富であり、天然の赤い色素を有します。
この鮮やかな天然色素にこそ、様々な効果・効能があることが明らかになってきました。
そして、近年、スポーツの現場においても、カロテノイドの摂取が注目されつつあります。
カロテノイド高含有食品
上記の表、赤枠で囲っている部分はカロテノイドを多く含む食品です。
食品の鮮やかな色合いが連想されたのではないでしょうか。
「色の濃い野菜(=緑黄色野菜)を食べなさい」と言われる理由はここにあるのです。
細胞レベルでみるカロテノイド
カロテノイドが特に高い抗酸化力をもつ理由がその構造に秘められています。
我々の身体は約37兆個の細胞からできており、その1つ1つの細胞は、細胞膜という二重膜で守られています。
しかし、過剰な活性酸素は、細胞の膜を攻撃して細胞にダメージを与えます。
例えば、ビタミンCなどの水溶性の抗酸化成分は、脂質で構成された細胞膜を通過することができないため、細胞膜の外に存在します。
一方、脂溶性であるカロテノイドは、細胞膜の内側、あるいは膜を貫通するようなかたちで存在しているため、活性酸素から細胞を守る力に優れているのです。
細胞膜を守ることにより、期待できる効果
(A)免疫力を高め、風邪をひきにくくする
(B)眼の疲れおよび炎症を軽減する
(C)肌の調子を整え、シミ、シワ、肌荒れなどを改善する
特に(A)(B)はアスリートのコンディショニングにも必要な要素です。
(C)についても、屋外でトレーニングを行う競技のアスリートにおいては、活性酸素を発生させる「紫外線」から肌を守る必要があります。
夏は、紫外線が強くなりますので、身体の内側から抗酸化対策が大切となります。
カロテノイドと運動パフォーマンス
ある先行報告により、カロテノイド類であるアスタキサンチンは次の効果がみられたと報告があり、活用に期待が寄せられています。
◆20㎞レースタイム(自転車競技)の短縮(1)
◆筋持久力向上(2)
しかし、カロテノイドと運動パフォーマンスに関する報告は極めて少ないため、今後、検討が必要な分野と言えます。
まとめ
以上、カロテノイドは高い抗酸化力を有し、次の効果が期待できることをお伝えしました。
・免疫力UP
・眼の健康
・肌の健康
・運動パフォーマンスUP
活性酸素を発生しやすいアスリートは、コンディション維持や向上のために活性酸素対策が必要です。
細胞膜や細胞の中・外、それぞれの場所で抗酸化作用を発揮する栄養素をバランスよく摂取することが、活性酸素から身体を守るために大切ですね。
人間の体内では、カロテノイドを生成することができないため、食品から積極的に摂取して行きましょう!
参考文献
(1)Earnest CP et al., Effect of astaxanthin on cycling time trial performance, Int J Sports Med, 2011
(2)Curt L et al., Dietary Supplementation with Astaxanthin-rich algal meal improves strength endurance –A double blind placebo controlled study on male students–, Carotenoid Sci, 2008
・管理栄養士・公認スポーツ栄養士・IOC Diploma in Sports Nutrition・オーストラリア国立スポーツセンター(AIS)アシスタントスタッフ(2016年~)・全日本スキー連盟ハイパフォーマンスサポートスタッフ(2016~2018年)・日本バレーボール協会 医科学スタッフ(2017~2021年)・日本スケート連盟フィギュアスケート部医科学スタッフ(2020年~現在)などの日本代表チームに対する栄養サポート経験等を経て、現在は大学で研究活動にも取り組んでいる。