疲労の蓄積要因の1つに活性酸素によるダメージがあります。
今回は、活性酸素が体に与える影響と、体を守るための対策をチェックしていきましょう!
トレーニングにより活性酸素が発生する
我々は、普段の生活ので、酸素を吸って生きています。
運動時には、身体に取り込む酸素の量が多くなるために「活性酸素」が多く産生され、身体が「酸化」された状態になります。
分かりやすく例えるならば、活性酸素は身体をサビつかせる物質、というイメージです。
活性酸素についての詳しい説明は、こちらを参考に!
>>>【過剰な活性酸素は疲労蓄積やパフォーマンス低下の原因に】
特に筋力トレーニングや一過性の運動時には、酸素摂取量が安静時の10~15倍となり、筋組織への酸素流量が約100倍にも達すると言われています。
筋肉は、運動時に急激な血流量の変化などにより最も活性酸素の影響を受けやすい組織のひとつです。筋肉が過度の活性酸素に曝されると疲労が蓄積していきますので、対策が必要です。
さらに、屋外での運動においては紫外線に暴露されるため、皮膚下での活性酸素が生成されやすくなります。
特にこれからの季節、アスリートはもとより一般の運動を楽しむ方においても「抗酸化対策」が必要でしょう。
酸化から体を守る抗酸化とは?
抗酸化とは、活性酸素による身体のサビ(ダメージ)を防ぐというイメージです。
抗酸化作用のある食品成分は、酸素と反応したときにそれ自体が酸化されるため、身体の細胞が直接酸化されることを防ぐのです。(科学的には「還元作用がある」と言います。)
今回は、抗酸化成分の中で、日常的に摂取しやすいビタミン類に注目してみましょう。
抗酸化成分ビタミンC、E
強い抗酸化作用をもつ成分であり、体内の活性酸素の除去に役立ちます。
ビタミンCは、柑橘系の果物(オレンジ、グレープフルーツ、キウイなど)や緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草、人参など)に、ビタミンEはアーモンドなどのナッツ類に豊富です。
抗酸化力を高めるために、これらの食品を日常的に摂取することが望ましいです。
摂取量について
抗酸化作用の強いビタミンCやEは、とにかくたくさん摂ればいいのか?
と質問されることがありますが、答えは「NO」です。
「たくさん食べるほど良い」ということは決してありません。
ビタミンC、Eの摂取量が身体にもたらす影響やスポーツへの関係性について次のような報告があります。
◆ビタミンCは摂り過ぎることで悪影響をもたらす1)
◆運動との併用効果では有酸素および筋力トレーニング時に
ビタミンC 500~1000mg/day
ビタミンE 200~400mg/day
を摂取すると、トレーニングによる有益な効果が軽減される2,3)
厚生労働省による日本人の食事摂取基準においては、健康な一般成人(高強度の運動をしない人男性の場合)を対象とした推奨量または目安量は、ビタミンC 100㎎、ビタミンE 6.5㎎です。
アスリートにおいては、それよりも多くの量を摂ることが望ましいですが、上記の報告のようにサプリメントにより過剰に摂取すると、マイナスの作用があるかもしれません。
食品中に含まれるビタミンC、ビタミンE
ビタミンC
オレンジ80g(約1/2個分の可食部)あたりに40㎎、ブロッコリー50g(4~5房)あたりに60㎎程度
ビタミンE
アーモンド10g(10粒程度)あたりに3.1㎎程度
このように、食事から適量摂取している範囲では、過剰摂取には繋がらないでしょう。
しかし、ビタミンCやEは、サプリメント、ドリンク、エネルギーゼリーなどにも含有されているため、これらを併用している方は、摂り過ぎないよう注意が必要です。
複数のサプリメントやドリンクを使用されている方は、栄養成分表示をチェックし、トータルのビタミン類の摂取量を把握してみましょう。
ビタミンCやEは強力な抗酸化作用を発揮する重要な栄養素です。
そのため、運動量が多く、身体に取り込む酸素の量が多いアスリートは、一般の人よりも多くのビタミン類を摂取すると良いでしょう。
ビタミンCやEが豊富な食品を組み合わせて摂取することをお勧めしますが、摂り過ぎには注意しましょう。
参考文献
1)Rousseau AS et al., Antioxidant vitamin status in high exposure to oxidative stress in competitive athletes, Br J Nutr, 2004
2)Ristow M et al., Antioxidants prevent health-promoting effects of physical exercise in humans, Proc Natl Acad Sci USA, 2009
3)Paulsen G et al., Vitamin C and E supplementation alters protein signaling after a strength training session, but not muscle growth during 10 weeks of training, J Physiol, 2014