一般的な日本食というと、
ごはん+主菜+副菜2品+汁もの
の一汁三菜スタイルでしょうか。
一般的な日本食は、エネルギー摂取量に占める炭水化物の割合が約60%、たんぱく質が20%、脂質が20%程度となります。
アスリートの食事においては、摂取エネルギー量は多くなりますが、炭水化物、たんぱく質、脂質の比率は大きく変わりません。
しかし、近年、競技力の向上を目指したアスリートが、
低炭水化物高脂質食(Low Carb Hight Fat diet:LCHF diet)
に取り組んでいることもあります。
「何それ?そんな食事法、初めて聞いた!」
という方が多いかもしれません。
私も、かつては、高脂質食とアスリートの食事が結びつかずにいましたが、2016年から、オーストラリア国立スポーツセンターの研究に携わらせていただき、日本では馴染みのない食事戦略についても、理解が深まってきました。
アスリートを被験者とした研究の中で、様々な食事法と栄養戦略が検証されていましたが、特に興味深かったものが、低炭水化物高脂質(LCHF)食です。
また、最近、LCHF食についての質問をいただく機会も増えました。
そこで、今回は、アスリートが実践しているLCHF食の一部をご紹介したいと思います。
1)LCHF食の一例
(総エネルギー摂取量に占める脂質の割合が70%以上の食事の場合)
高脂質食と言っても、ただ単に脂質の多い食品を食べるということではありません。
まず、脂質の種類を考える必要があります。
脂質の種類とその食品については、前回のコラムでお伝えしておりました。
ご確認ください。
>>>【アスリートに良い油!?】脂質を上手く利用するコンディショニング!
LCHF食では、飽和脂肪酸である動物性脂は極力避けて、不飽和脂肪酸である植物性油や魚油を中心に摂取します。
日本ではあまり馴染みのない食事法ですが、海外のアスリート(特に持久系種目)が、脂質代謝を高めることを目的とし、取り組んでいます。
2)脂質代謝を高めるLCHF食の考え方
「脂質代謝を高める」とは、脂質を燃やしやすい体質にするということです。
競技中に脂質を優先的に燃焼することで、競技後半に糖質(エネルギー源)を残すことができるため、持久力UPが期待されます。
◆LCHF食の欠点
LCHF食の欠点としては、脂質の摂取量が多いため、消化吸収に負担がかかることです。
また、高脂質食への適応には、個人差があります。
特に、日本人アスリートは、日本食に慣れているため、高脂質食に適応中に、下痢になったり、体調を崩すケースが多かったことも事実です。
そのため、脂質適応中には、強度の高いトレーニングを行えなくなることも、しばしばあるのです。
先行研究においては、脂質代謝は高まったが、レースタイムが落ちた、という例も紹介されています1)。
まとめ
海外で注目されている食事法の一つではありますが、上手く適応できるかについては、個人の体質によります。
日本人は、高脂質食への適応が容易ではありませんので、積極的におすすめはできませんが、どうしても試してみたいという方は、大事な試合の前は避け、トレーニング期に取り組んでみても良いかもしれません。
また、実施する際は、食事によるエネルギー源を炭水化物から脂質へと徐々に移し、脂質適応を促すと良いでしょう。
こういった方法でパフォーマンスを管理する食事方法があるということを、知識情報としてご紹介してみました。
参考にしてみてくださいね。
1)Burke ML et al.,Low carbohydrate, high fat diet impairs exercise economy and negates the performance benefit from intensified training in elite race walkers, J Physiol.,