梅雨明けの時期は、比較的冷涼な天候から一気に高温多湿な天候に変化します。
このような季節の変わり目には、多くの人が十分に暑さに慣れておらず、汗が上手くかけません。
そのため、気温は真夏ほど高くないのに、身体がだるかったり、運動時に不調を感じたりします。
そのため、春から夏にかけては、パフォーマンスを高めることに加え、十分な熱中症予防も必要です。
実際、暑さ指数(WBGT)※が28℃を超える梅雨明け頃から熱中症リスクが高くなります1)。
では、夏本番に向けて、どのように体調やパフォーマンスを高めていけばよいのでしょうか。
一案として、夏前から暑さに体をならす(=暑熱順化する)ことが役に立つかもしれません。
今回は、「暑熱順化」の重要性と方法をお伝えします。
①暑熱順化の重要性
毎日、暑いところで活動をしていると、上手に汗がかけるようになります。
運動中にも自然に沢山の汗をかくことができます。
このような体の適応を暑熱順化と言います。
この順化により、外気温が高くても急な体温上昇が防がれ、運動中のパフォーマンスがある程度は維持できます。
しかし、季節の変わり目や、寒冷な地域から気温の高い地域に移動した時などは、体が十分に順化していないため、何らかの方法で、暑さに体を慣らしておく必要があります。
②運動・スポーツのための暑熱順化法はあるのか?
国際オリンピック委員会(IOC)が、東京五輪に向けた暑熱対策に関する指針(Beat The Heat during the Olympic Games Tokyo 2020, IOC, 2019)を発表しました。
この指針では、パフォーマンスを最適化し、熱中症のリスクを軽減するための推奨事項が10箇条にまとめられています。
この指針の内容は、オリンピック選手のみならず、運動やスポーツをする方が参考にできる部分もありますので、今回は、いくつかの方法をご紹介します。
③暑熱順化にはどのくらいの期間が必要か?
暑さに体が順化するには、7から10日が必要とされており、2週間以上の暑熱順化が推奨されています。
しかし、2週間も順化する期間がないという場合は、少なくとも1週間行いましょう。
④暑熱順化するための具体的な方法は?
1)屋外で毎日、60分以上(~90分程度)のトレーニング
屋外での運動・トレーニングにより、体温を上げることが目的です。
低強度の運動から少しずつ強度・時間を増やしていき、決して無理をしないようにしましょう。
2)屋内トレーニング(屋外でのトレーニングが難しい場合)
屋内でも、運動することで体温が上昇します。
可能であれば、部屋の温度や湿度を高めて、屋外により近い環境を作れると良いでしょう。
3)入浴も効果的
トレーニング前後で、40℃前後のお風呂かサウナに30~60分程度入ることを目安にしましょう。
1度に時間が取れない方は、2回に分けてもOKです(例:30分を2回など)
30分は長すぎる、という方は10~15分程度でもしっかり肩まで浸かりましょう。
その日の自分の体調に合わせて、決して無理をしないことも大事です。
また、トレーニング前後が難しい場合は、1日のどかでゆっくり入浴できる時間を作れると良いでしょう。
いかがでしたか?
これから暑くなる前に、なるべく体をならしておくと、夏の試合や練習でもパフォーマンスを維持できるでしょう。
また、暑熱順化する際には、いつもより汗の量が多くなっているので、普段以上にしっかりと水分補給をすることも重要です。
次回は、暑熱対策のための水分補給について、ご紹介します。
※暑さ指数とは(WBGT)
熱中症を予防することを目的に提案された指標です。単位は気温と同じく、摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なっており、①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを考慮した指標です2)。
1)環境省,夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン2020, 2020年.
2)環境省,熱中症情報サイト, https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php