2000年以降、アスリートにおけるビタミンD摂取についての研究が活発になり、ビタミンD摂取が免疫UPや筋肉・骨の健康を保つために重要な役割を担っていることが分かってきました。
日本ではまだ馴染みがないかもしれませんが、海外のスポーツ現場においては、ビタミンDがトピックスになるほど注目されています。
今回は、アスリートがビタミンD摂取のメリットを、最新の情報に基にお伝えします。
意外と知られていないビタミンDのはたらきとはどのようなものなのか。
代表的なものを3つ挙げてご紹介いたします!
スポーツ現場で期待されるビタミンDの効果・効能
1.免疫を高めて炎症を抑える
ハードなトレーニングを繰り返すアスリートにとって、免疫力を高めることはとても重要です。
ビタミンDの摂取が十分であると、免疫の指標(IgA)が高くなり(1)、炎症の指標(TNF-α)は低くなる(負の相関がある)と報告されています(2)。
従って、ビタミンD摂取は、免疫機能の維持・改善に貢献できる栄養素の一つと言えるでしょう。
2.筋肉の機能向上
パフォーマンスを最大限高めるために、トレーニングと並行して筋肉のケアは欠かせません。
ビタミンD摂取により、筋パワーが増加したという報告もみられます(3)。
特に紫外線が弱くなる冬には、体内でのビタミンD合成量が低下するためトレーニング時におけるビタミンD摂取が重要となるでしょう(4)。
さらに、専門家の間では、ビタミンD摂取がけがの予防にも役立つ可能性があると言われています。
3.骨の健康を保つ
アスリートにとって骨折は致命的であるため、骨を強くする必要があります。
カルシウムと同様にビタミンDも骨を健康に保つために重要な役割を果たします。
ビタミンDは腸からのカルシウム吸収を高めるため、骨密度が低い方は、カルシウムと併せてビタミンDを摂取するとよいでしょう。
一方でビタミンD不足が問題に
特にアスリートにおいてビタミンD不足が多く見られます。
アスリートのビタミンD状態を調べたメタアナリシスは、半数以上のアスリートにおいてビタミンD不足がみられるとも報告しています(5)。
そうなると、ビタミンD不足は他人ごとではありませんよね。
一般的に、血中ビタミンD(25(OH)D)濃度の基準値は、一般の人よりもアスリートにおいて高く設定されることが多いです。これは、トレーニングを最適化するためにより多くのビタミンDが必要とされるからです。
(目安としては、血清25(OH)D濃度が100nmol/L(40 ng/ml)以上となります。)
特に、太陽光(紫外線,UVB)が十分あたらない環境下において、トレーニングや生活をすると、体内のビタミンD合成量が低下しますので注意が必要です。
まとめ
ビタミンDはアスリートの健康やパフォーマンスを維持する上で、重要な栄養素です。
そして、ビタミンDを摂取するメリットは、大きく3つ!免疫、筋肉、骨の機能が高められるという点です。
その一方で、不足しやすい栄養素でもあるので、適正なビタミンDレベルを保つためには対策が必要となるでしょう。
次回のコラムでは「ビタミンDの上手な摂取方法」をご紹介させていただきます!
参考文献
1)He et al., Influence of vitamin D status on respiratory infection incidence and immune function during 4 months of winter training in endurance sport athletes, Exerc Immunol Rev, 2013
2)Willis et al., Vitamin D status and biomarkers of inflammation in runners, J Sports Med, 2012
3)Zhang et al., Effect of vitamin D supplementation on upper and lower limb muscle strength and muscle power in athletes: A meta-analysis, PLOS One, 2019
4)Wyon et al., The influence of winter vitamin D supplementation on muscle function and injury occurrence in elite ballet dancers: A controlled study, J Sci Med Sport, 2014
5)Farrokhyar et al., Prevalence of Vitamin D Inadequacy in Athletes: A SystematicReview and Meta-Analysis, Sports Med, 2015
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