健康維持や免疫対策においても食事は重要な役割を果たしています。
自粛生活の中で、改めて食生活を見直す機会があった方もいるのではないでしょうか。
世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する栄養面の戦略としてバランスのとれた食事の重要性を述べており、「ビタミン、ミネラル、食物繊維、タンパク質、抗酸化成分を補給するために、多くの新鮮な未加工食品を食べる」を基本戦略としています1)。
新型ウイルス対策を念頭に置いた総説においても「ウイルス感染症の予防と治療にはバランス良く栄養素を摂取することが有用である」と強調されています2)。
このように、世界的にも「バランスの良い食事」が重要視されているのです。
今回は、「なぜバランス良く食べると良いのか?」に焦点を当ててお伝えします。
栄養素はチームプレー
ビタミンやミネラルは体の中で互いに作用し合っています。
栄養素は単体よりもチームプレーを得意とし、組み合わせてとることで相乗効果(複数が合わさってより高い効果が出ること)が得られます。
このことを栄養素間の “相互作用(Interaction)” とも言います。
逆に、過度な食事制限や1つの栄養素だけを沢山とることは、このチームプレーを乱してしまいますので、注意が必要です。
(余談ですが、これは人間の社会でも同じこと。必要なポストに適任者がいなかったり、同じ能力を持つ人ばかりがいる組織ではなかなか仕事のパフォーマンスが上がりませんよね。)
栄養素のチームプレーをイメージしやすくするために、「エネルギー代謝の円滑化」を例に挙げたいと思います。
バランスの良い食事は代謝効率を高める!?
読者の皆さまの中には、「バランスの良い食事は代謝効率をアップさせる」という話を聞いたことがある方も多いかもれません。
このことを少し科学的に説明すると、
我々の身体を動かすエネルギー源となるのは、炭水化物、脂質、たんぱく質の三大栄養素です。
これらの三大栄養素が身体の中でエネルギーに変わる時には、必須ビタミンやミネラルが必要とされ、その中でも特にビタミンB群は重要な役割を果たします。
このように、エネルギーを作るためにはエネルギー源となる三大栄養素のみでなく、ビタミンBなどが補酵素としてはたらくことで体を動かすためのエネルギーが作られます。
そして、三大栄養素とビタミンB群を多く含む食品は以下の通りです。
【三大栄養素とそれを多く含む食品例】
◆炭水化物
ご飯 パン 麺類 ナン いも類 果物 シリアル など
◆脂質
オリーブ油 魚油 サラダ油 ラード アボカド ナッツ チーズ バター など
◆たんぱく質
肉 魚 卵 大豆製品 豆類 など
【ビタミンB群とそれを多く含む食品】
◆ビタミンB1
豚肉 レバー 玄米 など
◆ビタミンB2
レバー 乳製品 卵 納豆 魚類 など
◆ビタミンB6
レバー 大豆製品 魚 など
◆ビタミンB12
肉、魚、乳製品 など
◆葉酸
緑黄色野菜 レバー 大豆製品 など
◆ビオチン
肉 卵 大豆製品 など
◆ナイアシン
レバー 肉 魚 など
◆パントテン酸
レバー 肉 魚 卵 など
このように、代謝に関わる栄養素を食事からとるためには、様々な食品を選択する必要があります。
様々な食品をとるためにはバランスの良い食事が必要です。
ここまでを整理すると、「バランスの良い食事」→「様々な栄養素が摂取される」→「栄養素のチームプレーにより代謝効率が高められる」となりますね。
また、栄養素のチームプレーによる効果はエネルギー代謝だけではなく、免疫力UP、骨の健康維持、貧血予防、抗酸化力UP、ストレス軽減など様々です(今回は割愛しますね)。
さらに、まだ解明されていない作用もあるでしょう。
まとめ
栄養素のチームプレーがはたらく「バランスの良い食事」は、健康面への様々な良い効果が期待できます。
その代表的な例として、「代謝効率UP」などが挙げられます。
一方で、特定の栄養素の制限や1つの栄養素を沢山摂取するなどの偏った食事は、このチームプレーを妨げる可能性があります。
この機会に一度、食生活を見直してみるのも良いかもしれません。
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1)世界保健機関(WHO)HP:http://www.emro.who.int/nutrition/nutrition-infocus/nutrition-advice-for-adults-during-the-covid-19-outbreak.html
2)Jayawardena R, Sooriyaarachchi P, Chourdakis M, Jeewandara C, Ranasinghe P. Enhancing immunity in viral infections, with special emphasis on COVID-19: A review. Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviews 2020; 14:367-82.
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