アスリートは健康?
過酷なトレーニングを重ね、肉体や精神を極限まで追い込み競技に臨むアスリート。
引き締まった身体と強い精神力でプレーをする姿から、「アスリート=健康」を連想する方も多いかと思いますが、実は、一般の人よりも体調を崩す頻度が3倍高い、ということをご存知ですか?
今回は、トレーニングがもたらす健康へのリスクについて書いてみます。
アスリートの体調管理
味の素株式会社と公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)によるトップアスリート110人に対し実施した、体調管理に関するアンケート調査があります。
アンケート調査の中でも、特に気になった2つのアンケート項目についてご紹介いたします。
Q1.免疫力が下がったと感じることがありますか?(複数回答)
・54.6%のアスリートがトレーニングを始める前に比べ「免疫低下を感じている」と回答しています。
Q2.国際大会回期間中に日本選手団がかかった病気は
・35.2%のアスリートが、かぜ症候群にかかったと回答しています。
つまり
Q1とQ2の結果を踏まえ、かぜ症候群の原因の多くはウイルス感染です。免疫低下の要因はどこにあるのでしょうか?
スポーツ選手のトレーニングと免疫能
マラソンやトライアスロウンのような持久性運動では、競技終了後2週間で50〜70%の選手が風邪の症状を呈し、そのリスクは通常の2〜6倍になると報告されています。
また、激しい運動により免疫を司るNK細胞やlgA、T細胞の機能や数が一過性に抑制されるという報告もあります。
免疫能が弱まりウイルスに感染しやすくなることから、上気道感染症(いわゆるかぜ症候群)の頻度が一般の人よりも3倍高い、というデータもあるのです。
上記2つのアンケート調査のグラフからも、トレーニングや競技中にかかる身体への負荷や、緊張・ストレスが免疫能の低下に影響を与えていることが想像できるのではないでしょうか?
適度な運動は免疫能を高め感染や癌の予防に有効とされていますが、競技スポーツにおける過度なトレーニングは免疫能を弱め、ウイルスに感染しやすい状況をつくってしまうと考えられています。そのため、運動習慣と感染リスクの関係について「Jカーブ仮説」(以下グラフ)が提唱されています。
適度な運動は健康を維持するために必要ですが、過度な運動を継続すると健康を脅かすリスクになってしまう、ということです。
最高のコンディションを維持するために
この記事を読んで、トレーニングの負荷量が上がる時期やハイシーズンで試合が続く時期に体調を崩してしまう、と自覚のある選手も少なく無いはずです。
「激しい練習の後に体調を崩す人は体力がない、甘えがある」のではなく、免疫能の低下をまねくほど、自分を追い込んでトレーニングに取り組んだためかもしれません。
日々の過酷なトレーニングで傷ついた肉体のリカバリーはもちろん、免疫能の低下についても意識してケアしていく必要がありそうです。
また、選手だけではなく、サポートする方も「激しいトレーニングは健康を害するリスクになりうる」という認識を持つことも大切ですね。
選手の負荷量が増える時期、食事や休養の取り方について考える機会になればと思い、記事を書かせていただきました。
参考になれば嬉しいです。
免疫と腸内環境の関係についてはこちらの記事で!
<参考資料>
1)味の素株式会社と公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)による調査
2)鈴木克彦.運動と免疫.日本補完代替医療学会誌 1,31-40,2004.
アスリートコレクション編集部
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